過日、知人の奥さんがガンで亡くなられました。2年間の闘病生活だったそうです。
奥さんは自分の病気がガンであることを知ってから亡くなられる3ヶ月前まで入院することを拒み、家のことや家族のことに奔走したとのこと。
毎日綴る日記の文字が、段々弱々しくなっていくことで、本人は病気の進行具合と余命を悟っていたようです。
亡くなる間際に、ご主人の手を握って「今、私にできることはこれだけだから」と微笑んだのが、夫婦の最後の時間となりました。
ご主人は「できることなら、今まで自分がムダに過ごした時間を家内にあげたかった」
と涙ながらに語っておられました。
死を目前にして「今、自分にできることを」と、ご主人の手を握った奥さん。
奥さんが痛切に生きたいと思う時間を、自分はなんとムダに過ごしていたのかと自責の念に駆られるご主人。
単なる「夫婦愛」という言葉以上の絆が二人にあったように思います。
「亡くなられた方の幸せの度合いは、残された者の生き方で決まる」と言われます。
ご主人は奥さんからのメッセージを最後で最高の贈り物として、しっかりと受け止めておられるようです。
鴨井尚志