ある新聞記者の記事の一部です。
「頑張れ」と人に声をかけないように心掛けている。きっかけには三つの取材経験がある。
一つは不登校取材。「頑張って学校に行こう」との周囲の励ましが重みだったと話す子どもたちの声を聞いたからだ。 過剰な期待に本人が負担を感じるようなら、やめておいた方がいいと考えた。
その前には阪神大震災の取材で「頑張って下さい」と声をかけた被災者に「これ以上、どう頑張ればいいんでしょうか」と問い返された経験もあった。だれもが精いっぱい頑張って生きているのだから、このケースでは少し酷な言葉だったと反省したものだ。
またあるとき、事故で半身不随になった女性と話す機会があり、懸命にリハビリに励む彼女から「『頑張って!』は努力していない人にかける言葉です」と言われたこともある。
とはいえ、「頑張って」以外に、適当な励ましの言葉を探すのは難しい。
「応援しているから」
「何かあったら連絡しろよ」。大概は握手して口ごもってしまう。
きょうから大学入試センター試験が始まった。受験生は約55万人。わが子もその一人だ。
さて、どう言おうか。娘はさっさと受験会場に向かった。それはそれで良かったが、何かいい言葉はないものだろうか。とりあえず「ご苦労さんでした」と明日言おう。
「頑張れ」。発する側の思いがなかなか伝わらない難しい言葉です。