「敗戦真相記」 という本があります。この本は、日本が第二次大戦に負けた原因を独自の視点で分析した内容となっています。
著者は、日本が戦争に突入した諸事情として、
(1)日本の指導者がドイツの物真似をした。
(2)軍部が己を知らず、敵を知らなかった。
(3)世論本位の政治を行なわなかった。
という3点を挙げており、その一つ一つの見方がたいへん教訓に満ちています。
確かに、
(1)は自社の独自性(強み)を持たない。
(2)は競合のことを知らない。
(3)は顧客の声(要望)
を聞かない。に繋がります。
日本が犯した過ちを事例で紹介しますと、開戦後、日本語の研究所をつくり、日本の分析を多面的に行い、様々な手を打ってきたアメリカに対して、日本は敵国語だといって、英語を国中から排除してしまいました。戦争になったからこそ、相手を研究すべきなのに、実際にしたことはその逆でした。
敵国の力量と実情を知ろうともせず、ただ闇雲に戦っても、科学的な研究に力を入れる英米に勝てるわけがないと著者は結論づけています。
企業という組織においても、断片的な情報から総てのことを知っているように思い込んでしまったり、自分だけの経験から現実とかけ離れた予測を立てたりして、事実を議論のテーブルに乗せないまま、重大な決断を下してしまうことが時としてあります。
ふたつ目のエピソードを引用しますと、戦時中、日本国内の軍需工場はいくつかありましたが、同じ工場に陸軍用と海軍用に二つの門があり、工場への出入りは別々でした。さらに、そればかりか、同じ敷地内にある軍需資材でありながら、お互いに決して融通し合わないという事実があったらしく、こうした陸・海軍の不一致が致命的な敗因につながったと分析しています。
今でも国や企業の中には組織の壁があり、それが意思決定を阻害しているケースは少なくありません。
著者は、「半世紀以上の時を経た今、日本は同じ過ちを繰り返している。敗因として挙げたあらゆる項目が、今の日本にそのまま当てはまる」と指摘しています。
よく「歴史から学べ」と言われますが、歴史が失敗を前例として示してくれているのですから、我々は、現状に甘んじることなく、事実を常に確認し、世情や顧客の変化の中で、わが社があるいは自分がどうあるべきなのか、よく考えるべきでしょう。
一人一人の品質が、組織全体の品質を作っています。