大手菓子メーカーの事件が連日報道される中、次のコラムを見つけました。

お金を儲けることしか興味がなく、無駄な出費は一切しない。利益にならない友人とは付き合わず、責任は極力他人に押し付ける。人にはやたら厳しく、相手を押しのけてでも自分を主張する。このような人間が周囲にいるとしたら、あなたはどうしますか?
彼が、人としてのバランスを欠いた人間だということは、異論のないところだと想像します。しかし、法人(会社)という人格に限れば、多くの法人は、あたかも生まれ持った気質のように、彼のような性格を持っています。そして不思議なことに、この法人の持つ病的な性格に関して、誰も根本的な疑いを抱くことがありません。
仮に、これとは反対の性格の法人を思い描いてみてください。お金に執着心がなく、困っている人がいれば相談にのり、他人の責任をすべて自分の責任のように背負い、人には優しく、いつも控えめな態度を旨とする。このような会社が果たして存続できるでしょうか?
むしろ、貪欲で競争相手を蹴散らすほどのパワーがあり、ちょっとした隙間があれば、そこに入り込んでビジネスチャンスをものにし、自社のリスクに関しては、二重・三重の対策を講じる用心深さを持ち、顧客には自信に満ちた提案ができる会社の方が、長く生き続け、投資家にも魅力的だと思います。
このように、人として善しとされる性格と、法人として善しとされる性格は、相反するところがあります。法人は、人間の集団から成り立っています。したがって、道徳心を持った人間のアクセルやブレーキがバランスよく働いてこそ、貪欲さ、執着心、自己主張、用心深さ、自信等がプラスに作用し、社会に認めてもらえる法人になりえるのです。

消費期限の切れた牛乳を使用したお菓子を製造し、出荷していたくだんの会社は、百年の歴史と信用を、たった一瞬で失くしてしまいました。
この会社は、ISO9000も14000も取得している企業です。その会社が、残念なことに、顧客を裏切ってしまいました。どのように外観を装おうとも、心を失った人間の集団となったとき、法人はその存在価値をなくしてしまいます。
企業として、見失ってはならないものを教えてくれる事件です。